日本財団 図書館


 

はしがきにおいて、緑の革命を国際農業技術移転の典型として位置づけたが、それは、先進国技術の途上国への単なる移転ということではなく、先進国で発展した近代技術の知識を清して、途上国の諸環境に合致した新しい品種を開発したことにこそ、その本質的な意義があるのである。

 

3) 緑の革命の技術的特徴の整理
以上のような近代的品種の開発普及を核とした緑の革命の技術的特徴を、IRRIが8ヶ国での稲作農家の調査結果を、改良品種と在来品種、さらに灌漑田と天水田、そして、データのある国については雨期と乾期に分けて比較した表1から整理すると以下のようにまとめることができる。(5)
(1) 改良品種・肥料増投・灌漑の3点セット:緑の革命の技術的本質は、BCテクノロジー(Biological−Chemical Technology)であり、バイオ技術としての高収量改良品種、化学産業発展の成果である化学肥料と、両者の効果を発揚させる場としての灌漑施設の3点が揃った場合に、ha当り収量が最高になると云う基本的特性が貫徹している。
(2) 改良品種の多肥多収性:同じ改良品種・灌漑田の条件で、肥料投入が150kg/ha水準以上のフィリピン等は高収量であり、逆に、40kg/ha台のカンボジア等の収量は明らかに低い。
(3) 在来品種の低耐肥料と低収量:在来品種に対する肥料投入水準は極めて低く、天水田での在来品種の収量は国際間であまり変らず低い。
(4) 肥料・米価格比と肥料投入:価格比が200%以上も大きくなると肥料投入も少ない(フィリピン、タイ、ネパールなど)。
(5) 改良品種の灌漑効果:灌漑田の収量は天水田よりはっきり高い(フィリピン、インドネシア等)。
(6) 在来品種の灌漑効果:収量の差は明確ではない(カンボジア)。
(7) 乾期における改良品種・灌漑田の高収量:雨期と較べた乾期の灌漑田での改良品種は高収量であり(フィリピン、バングラデシュ)、水があった上に十分な日照があれば、収量はより高くなる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION